秋月電子のSoC基板でyocto-linuxを動かしてみました(その1 環境構築編)

ARM

秋月電子で「部品取りに!無線モジュール付きSoc基板+白色プラスチックケース」が格安で売られているということでいろいろ試してみました。(すでに完売の模様)

aesoc-case0.jpg

この基板で使われているSoCはAM3352です。これと同じシリーズのSoCを使っているbeagleboneのイメージを使えば、debianベースでの利用はすぐできました。以下のページの通りに作業をすればdebianがeMMCにインストールされ、スイッチONでdebianが起動します。

でもせっかくなのでこの基板用にカスタマイズしたLinuxを載せたいものです。調べたところ、Yocto Projectという組み込みLinuxのプロジェクトを利用すると、汎用性が高くなりそうです。組み込みLinuxといえば以前MC68EZ328というCPUをつかった基板でμClinuxを動かしたことを思い出します。

Yoctoは全く使ったことはないのですが、試行錯誤の結果、Yocto バージョン3系のdunfell 3.1.23で試したところ比較的簡単にkernelが動きましたのでまとめておきます。なお、Yocto バージョン4系になるとdtsiファイルにパッチを当ててデバイスツリーを作り直さないといけません。このあたりは実験中なので後ほどまとめたいと思います。

Yocto Projectとは

Yocto Project(YP)は、組み込み用Linuxディストリビューションの一種ではなく、ハードウェアアーキテクチャに依存せずに、開発者がカスタムLinuxベースのシステムを作成するためのオープンソースのコラボレーションプロジェクトです。

Yocto Projectの説明や基本的な手順はYocto Projectの公式ページにあります。

手持ちのハードウェアに対応した自分だけのカスタムLinuxを作ることができるものと思えば良いでしょう。

秋月SoC基板を動かすための準備

まずは電源ケーブルを作りました。プラグサイズはΦ4.0×1.7mmで、電源電圧は5Vです。

aesoc-power-cable1.jpg

次にケースを開けます。3Gのアンテナへのケーブルがありますので切らないように注意してください。

aesoc-case1.jpg

シリアル接続のピンはすぐわかります。

aesoc-mpu-debug-port1.jpg

私の場合はここにUSBシリアル基板(3.3V)を接続しました。

aesoc-serial-console1.jpg

PCのターミナルソフト(私はUbuntuなのでGTKTermを使っています)で、115200bpsで接続します。SoC基板に電源を投入するとCの文字が連続して表示されます。

aesoc-ccccc.png

これはシリアルブートのためのXMODEMプロトコルが見えているのですが、ここまで動けばSoC基板は正常に動作し、シリアルコンソールの接続ができています。

Yoctoでビルド環境を作成する

Yocto Project Quick Buildに従って、ビルド環境の構築をしていきます。今回の開発環境はUbuntu 20.04 LTSを使っています。

まずはYoctoの動作に必要なパッケージをインストールします。

$ sudo apt install gawk wget git diffstat unzip texinfo gcc build-essential chrpath \
socat cpio python3 python3-pip python3-pexpect xz-utils debianutils iputils-ping python3-git \
python3-jinja2 libegl1-mesa libsdl1.2-dev pylint3 xterm python3-subunit mesa-common-dev zstd liblz4-tool

次にgithubからcloneしますが、このときは以下のようにdunfellのブランチを指定するようにします。

$ cd
$ mkdir yocto
$ cd yocto
$ git clone -b dunfell git://git.yoctoproject.org/poky.git

cloneが終わったら、以下のコマンドを入力します。これで開発環境ができました。buildというディレクトリの中に移動していると思います。ここにビルドで必要な設定や生成されたファイルが置かれていきます。

$ cd poky
$ source oe-init-build-env

buildディレクトリのconf/local.confに以下の行がありますので、この行の頭にあるコメント(#)を外して保存します。beagleboneはリファレンスボードのため修正箇所はこれだけです。

MACHINE ?= "beaglebone-yocto"

buildディレクトリで以下のコマンドを入力してビルドします。

$ bitbake core-image-minimal

ビルドにはかなりの時間がかかります。私のPCでは40分ぐらいかかりました。

ビルドが完了すると以下のファイルができます。(シンボリックリンクになっていますので実体は別ファイルです)

build/tmp/deploy/images/beaglebone-yocto/core-image-minimal-beaglebone-yocto.wic

このファイルをRaspberry Pi imagerのカスタムOSで読み込んで、microSDカードに書き込めば秋月SoC基板でブートできるmicroSDカードができます。

aesoc-yocto-image-sdcard.png

microSDカードからbootする

イメージを書き込んだmicroSDカードを秋月SoC基板にセットして、電源を投入するとyocto-linuxが起動します。

aesoc-yocto-dunfell-login.png

ログインはrootです。パスワードはありません。

組み込み用のLinuxなのでリソースが最小限になるように非常にコンパクトにできています。逆に最小限の構成でビルドをしているので、必要なコマンドやパッケージが入っていないこともあります。このままの環境ですと、sshdも無く/dev/ttyS1も使えない状態です。そのため、Yoctoをつかって自分好みに必要なコマンドやパッケージを追加してカスタマイズしたものでビルドすることで解決します。

電力メーターにしてみたい

秋月SoC基板にはスマートメーター(家庭の電力計)と通信ができるモジュール基板が搭載されています。

aesoc-wisun-module1.jpg

これを使うと自宅の電力量が読めるようになるはずです。私もこのSoC基板を知るまではそのようなサービスがあることも知りませんでした。

早速「電力メーター情報発信サービス(Bルートサービス)」の申し込みを行いました。今日時点ではまだ接続に必要な情報は届いていませんが、届いたらこの秋月SoC基板で接続して電力量のデータを取り込んでみたいと思います。そのためにはもう少しyoctoを使い込んで、必要なパッケージを組み込んだり、デバイスツリーなどを見直す必要があります。そういう経験をするには秋月SoC基板は良い教材だと思います。

秋月電子のSoC基板でyocto-linuxを動かしてみました(その2 カスタムカーネル編)に続く

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